とある魔術の禁書目録・外伝 プロローグ

これは「とある魔術の禁書目録」と言う既存のライトノベルの二次創作的な外伝小説です。
物語上の設定などは割と自分で解釈して自分勝手に書いていますので、原作を信仰されているファンの方は気を悪くする恐れがあります^^;
その点ご了承の上で御一読戴ければと思います。
それではプロローグをお送り致します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 暑苦しい日差しが照らしつける中、少女―――麻咲美弥(あさざきみや)は、小さなアパートの建物から外へと繰り出した。
 彼女が住まうこの『学園都市』は、東京都の約三分の一を占め、230万人の学生が住む巨大都市である。この街に住まうのはほとんどが特殊な学校に通う学生達であり、麻咲もその一人だ。
 この街では最先端の科学が研究されていて、その学生達は全て『超能力』開発を受けている。超能力者、と呼ばれる存在がこの街には多数存在しているのである。
 もちろん、全ての人間が揃いも揃って超能力なんてモノを手に入れるわけではない。能力開発を受けた学生達の半分以上はレベル0―――つまりは能力無しと判断されてしまう。
 超能力者にはレベルというランク付けがされていて、最高位のレベルは5。もっとも、その最高位ランクの人間はこの街に7人しか存在していないと言われている。
 そんな、超能力に目覚めるか目覚めないかの違いは大きい。麻咲はレベル2と呼ばれる、ごく普通の超能力者の位置にいた。レベルとはその所有する能力の強さの比例でもあり、麻咲はようするにその程度の強さを持つ能力を秘めている、と言う事だ。
 強さ、と一言で言ってもただケンカしてどちらが強いのか、なんて言う単純なモノではない。実用性、その他諸々によってそれは判断される。
 麻咲の持つ能力は『未来予知』。
 未来、と言ってもあまり遠くまで見る事は出来ない。せいぜい一日、24時間範囲での事しか予知は出来ない。
 それでもその能力はそれなりに評価された。もし一週間、一ヶ月と先を見る事が可能になれば、彼女のレベルは今より上へ昇華されているかも知れないが。

  ◆

 麻咲美弥は、自動運転で運行しているバスに乗り込んだ。
 そのバスの行き先は『常盤台中学』。学園都市の名門お嬢様学校である。
 麻咲は普段から遠くにある自宅のアパートから登校していた。普通ならば生徒達は寮を借りている事が多いのだが、麻咲は少し事情があって違っている。
 バスの中には、当然行き先が行き先なので登校中の女の子が多く乗っている。麻咲は空いている席を探していると、その中に一人の見知った顔を見かけた。
「あ、白井さん、おはようございますっ! 珍しいですね、バスで登校ですか?」
 その先に座っていたのは白井黒子。麻咲と同年代、同じクラスに通っている少女だった。名指しで呼ばれた彼女は、手を振りながら近付いてくるクラスメイトに向かって、
「あら、誰かと思えば麻咲じゃないの。まったくいつも言っていますけど、そろそろさん付けで呼ばなくてもよろしいのに。同じクラスメイトなんですから、そこまでかしこまる必要はないんですのよ?」
「い、いえ……でもやっぱり、格が違うって言うか……その」
 白井黒子はレベル4の『空間移動』能力者である。自分、もしくは自らの皮膚に触れたモノならば全て、限られた範囲内でのテレポートが可能、と言う物だ。麻咲とのレベルの差は2つもあり、その事から麻咲は彼女に対してかしこまらないワケにはいかないと言う、そんな状態で今まで続いている。
「はぁ、まぁそれはいいんですけど。ほら、そんな所に突っ立っていないでこちらにお座りなさい。今日は少し用事があってお姉様と一緒にこの辺りで待ち合わせをしていたハズなんですけれど……どうやら間に合わないようなので、丁度隣が空いていますし」
「あ、ありがとうございますー」
 お姉様と言うのは、彼女と麻咲にとって一つ上の先輩に当たる、レベル5の能力者『超電磁砲(レールガン)』の御坂美琴の事である。学園都市全体を数えて7人しか存在しないレベル5の少女であり、同時に白井黒子に取ってはそれだけの存在では収まらない、憧れと言う域を少し越えてしまっているほどの相手になる。
 ぶっちゃけてしまうと、白井黒子御坂美琴を溺愛していた。
 その事はクラスメイトである麻咲も知っている。もちろん知っていると言う素振りはこれまで見せた事がないが。
「そうだ、麻咲。今日のお姉様の下着の色は何色か、貴女の能力で予知してみてくれないかしら?」
「わ、わわ、いきなり何を言い出すんですか!?」
「……冗談ですわよ。未来予知で下着の色が解るならそれは未来を見れるのではなくて透視能力じゃないの。これくらいの事くらいすぐに気付きなさいな」
「そ、それくらい解ってますよぉ! 私が言いたいのは、もし出来たとしたってそんな事をして先輩に怖い顔されるのが……」
「……透視能力者、誰かウチの学校にいましたっけ?」
「うわ、人の話無視してさっそくパンツ覗きプラン構成中ですかーっ!?」
 バスの中だと言うのに構わず叫びながら会話をする二人をよそに、バスはガタゴトと動き始めていた。目的地まではそう距離はなく、およそ数分で到達する距離である。
 麻咲は黒子と共にバスに乗って、他愛も無い話をしながら自らの通う学校へと向かって行く。