Fate/End of extended Page.03

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「―――ダメです、サクラ。ここでアサシンを抑えなければ簡単に逃げられる！　そのような距離からの射撃が、この逃げ足の速いアサシンを捉えられるとは思えない。……控えろ、アーチャー。仕留めるのは私の役目だ」

　セイバーは捉えたアサシンを逃がさんと構えつつ、叫ぶ。
　確かに、もしこの位置からセイバーが退くような事があれば―――間違いなく、アサシンはその隙を突いてこの場所から逃げ去るであろう。
　アサシンの持つ隠密能力は全サーヴァント中でも飛び抜けている為、もしここで逃がすような事があれば、この先、アサシンを見つけ出す事は難しくなってしまう。

「そうですか。それは残念ですセイバー。貴女とは、いずれ正面から一騎打ちと洒落込むつもりだったのですが―――」

　声は、アーチャーのものだった。

「―――背中から射抜いてしまう事になるとは。手間が省けると喜ぶべきなのでしょうか」

「な……ッ！　アーチャー、貴様―――」

　アーチャーは手に握った弓を構え、セイバーとアサシンの居る方向へと向け、

「―――射抜く酒神の（マイナデス）」

「や、やめろアーチャーッ！！」

　暮宮円が叫び、

「豪槍（ランス）―――！！」

　瞬間、光が迸る。
　アーチャーの手元にあった弓のようなもの―――それは、弓であって弓ではなく。
　そこから射抜かれたモノは、矢などではない。

　―――槍であった。

「そ……んな、こんなこ……と」

　宝具。
　サーヴァントが個人で固有する、最強の武具―――アーチャーは、それを惜しむ事無く放ったのである。
　射抜く酒神の豪槍（マイナデス・ランス）を。

「マイナデス―――貴女、まさか」

　呟いたのは、間桐桜だった。
　何かに感付いたように、アーチャーに向けて言葉を放つ。

「……ええ、お察しの通り―――私はアーチャーの階位（ランク）に位置付けられた英雄・ヴァルキューレの英霊（サーヴァント）です」

「何故、槍使いである貴女がアーチャーの階位なのか少し気になりますけど―――」

「私は武器を選びませんので。この階位が妥当だと思いますが」

「そうですね。……なるほど、ここで手の内を晒すなんておかしいって思ったけど―――それが、奥の手ではないって事、か」

「さあ。どうでしょう。案外、今のが私の全力かもしれませんよ？」

　―――なんだ、これは。
　暮宮円は思う。
　……この二人はどうにかしている。
　アーチャーは、敵でもない金髪―――セイバーと呼ばれる少女ごとあの殺人鬼―――アサシンを打ち抜いて。
　間桐桜は、自分の身内であるはずのセイバーを打ち抜かれたと言うのに、何故そうも平然と、打ち抜いた本人であるアーチャーとあんな会話が出来るのか。

「それにしても、そうであっても随分な余裕ですねアーチャー。敵であるはずのこのわたしに、こうもあっさりと自分の正体を明かしてしまってもいいの？」

　―――そして。
　間桐桜は、不敵な笑みを浮かべ、アーチャーが射抜いた場所に振り返った。

「―――セイバー、大丈夫？　この程度のダメージなら、すぐに回復できると思ったから、手出しはしなかったけれど」

「……え？」

　セイバー、だって？
　まさか―――今の攻撃を受けて生きているというのか、あの少女は。

「……ええ、問題はありません―――ですが、すいませんサクラ。アサシンを逃がしました。先ほどの攻撃で確実に致命傷を負っているのは間違いありませんが」

「な……！」

　直撃、だった。
　セイバーの背中ごしに、あの光る槍は真っ直ぐに突き刺さり、突き抜けたはずだ。だと言うのに、何故―――

「さて、アーチャー。この落とし前、どう付けて貰おうか」

　何故、傷一つなく平然と立っていられるんだ、あの金髪は……！

「……今ので無傷とは、少々侮りました。さすがセイバーと言ったところでしょうか」

「ア、アーチャー。なんで、構えてるんだよ？　あ、あたしが言ったのは、あの殺人鬼を殺せってだけだ。その子とやり合えだなんて一言も―――」

「―――いいえ」

　言葉をさえぎったのは、暮宮円の隣で佇んでいる間桐桜だった。

「わたしたちマスターとサーヴァントは、お互いに殺し合う宿命なんですよ」

「は……？　な、なんだよそれ。意味がわから―――」

（マドカ。ここは撤退します。１、２で私の手に捕まって下さい）

　瞬間、頭の中にアーチャーの声が響く。
　どう言う事かは解らないが、この状況から回避出来るのであれば、乗るしかない。

（わ、わかったよ。１―――）

（―――２！）

　アーチャーの手を握ると―――気が付けば、円は空を飛んでいた。
　遥か下に、しまったとこちらを見上げるセイバーと桜の姿がある。

「……跳躍力ではこちらのほうが上のようですね。さすがのセイバーもここまでは追ってこれないようです」

　アーチャーが何か言っているが、今の円には聴こえていない。
　空を飛んでいると言うこの状況で―――先程まで行われていた、この世のモノとは思えない光景を脳裏に浮かべ、思考錯誤する。

（……イスカ、皆―――なんでこんなことに。どうして、あたしは）

　ふと、円の頬に涙が伝る。
　今まであまり他人の死に悲願して無く事のなかった円が、泣いていた。

（どうして、あたしだけ生きてるんだ……！）

　何でもないはずの、いつも通り過ごすはずだった平日の夜―――暮宮円の人生は、ここで大きく変わり始める。

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あとがき

ここで一端終了させておく。
前回のだとあまりに中途半端だったんで。
それにしても一気に適当に描いていくとマジでしょぼくなるなぁ。
やっぱりモチベーションって大事だね。実感。
とりあえず、こんなんじゃあまず作家にはなれないわｗ